「悲しみ」はどこにある?|感情を「心」ではなく「身体」から考える

「悲しみ」はどこにある?|感情を「心」ではなく「身体」から考える 身体からのアプローチ

感情って「心」のことだと思っている人、多いです

「悲しい」「怖い」「腹が立つ」「うれしい」「寂しい」

こういうものは、心の中で起こっているもの

だから、

「感情をコントロールしなきゃ」

「もっと冷静にならなきゃ」

「こんなことでイライラする自分はダメだ」

そんなふうに考えるのかもしれません

ですが、私は

感情って、かなり「身体」に近い

ということをお伝えしたい

感情が生まれるとき、身体では何が起きている?

たとえば、誰かに嫌なことを言われたとします

その瞬間、胸がギュッと縮む、お腹が冷たく重くなる、顔が熱くなる、呼吸が浅くなる、肩に力が入る

そんな身体の変化が起こることがあります

逆に、好きな人から連絡が来たら、胸がふわっと広がる、視野が拡がる、胸のあたりが温かくなる、顔が緩む

そんな変化が起こることもありますよね

私たちは普段、こうした身体の変化をいちいち意識していません

でも実は、私たちの脳は、つねに身体の状態を受け取っています
心拍、呼吸、胃腸の状態、筋肉の緊張、体温など

こうした身体の内側の状態を感じ取る働きを、「内受容感覚(interoception)」といいます。

内受容感覚は、感情や主観的な「感じ」の土台のひとつとして、とても重要だと考えられています

「身体が反応して感情が生まれる」だけではない

昔から、

「何かが起こる」→「身体が反応する」→「その身体の変化を感じて、感情になる」

という考え方がありました

これは、感情を身体から理解するうえで、とても重要です

ただ、現在の神経科学では、もう少し複雑に考えられています

私たちの脳は、

  • 今、身体で何が起きているのか
  • 目の前で何が起きているのか
  • これまでにどんな経験をしてきたのか
  • 今までの経験から、何が起こりそうだと予測しているのか
  • その状況をどう意味づけているのか

そういったさまざまな情報を統合しながら、今の自分の状態をつくっていきます

つまり、

脳と身体は、一方通行ではなく、ずっと互いに情報のやり取りをしている

そんなイメージのほうが、現在の神経科学には近いのです

だから、「感情は身体そのものです」と厳密に定義することはできません

でも、

「感情には、身体の状態がとても大きく関わっている」
といえるのです

「悲しい」は、身体のどこにある?

たとえば、「悲しい」という感情が出てきたとします

そのとき、胸がしゅんとする、お腹の奥が冷たい、喉が詰まる、目の奥が熱くなる、身体から力が抜けてしまう

そんな身体感覚があるかもしれません

「怖い」なら、背中がゾワッとする、心臓がドキドキする、足に力が入りにくくなる、呼吸が浅くなる

「イライラする」なら、顔が熱くなる、胸がザワザワする、顎や首に力が入る、身体が前のめりになる

こんなふうに、感情には、身体の変化が伴っています

そして私たちは、そのとき身体で起きていることや、その状況、過去の経験などを含めて、自分の体験を「悲しい」「怖い」「腹が立つ」といった言葉で捉えているわけです

だから同じ「悲しい」でも、人によって身体で感じる場所や感覚は違います

胸が痛くなる人もいれば、お腹が痛くなる人もいる、涙が出る人もいれば、逆に身体の感覚がなくなるように感じる人もいる

「悲しい」という言葉は同じでも、体験そのものは人それぞれです

「モヤモヤする」の正体

ここで、よくある感情について考えてみます

「なんかモヤモヤする」「なんかイライラする」「なんとなく嫌な感じがする」

こんな風に、なにかは感じているけれど、それが言葉で表現できないことがあります

でも、「言葉にできない=何も感じていない」わけではありません

むしろ、身体はとても感じているけど、言語化できない

胸のザワザワした感じ、お腹が重くずーんとしている、喉が詰まっている、身体が落ち着かずそわそわする、感じていることは確かにあるのに

それが「悲しい」なのか、「悔しい」なのか、「怖い」なのか、「嫌だ」なのか、まだ自分でもよく分からない

だから「モヤモヤする」になる、そんなこともあります

私たちは、身体で起きていることをいつも明確に言葉にできるわけではありません
そして、感情を言葉で捉えることも、経験や状況によって変わります

だからこそ、

「私は今、何を感じているんだろう?」

と考えるとき、頭の中だけを探すのではなく、

「今、身体では何が起きているんだろう?」

と見てみることが、とても役に立つのです

「身体で何が起きているか」を客観的に見ていくのには少しコツがありますので、その方法を、noteの記事で詳しくご紹介しています[感情は、感じきらなくていい|感情と”仲良くなり”本当の気持ちに気が付いていく5つのステップ]

感情をなくそうとしなくていい

感情に振り回されると、

「このイライラをどうにかしたい」

「この不安を消したい」

「もっと感情をコントロールできるようになりたい」

と思いますよね

でも、感情を「なくすもの」「抑えるもの」と考えると、余計に自分の感情と戦うことになります

それよりも、

「今、身体では何が起きている?」

と観察してみる

胸はどうなっている?呼吸はどうなっている?お腹は?肩は?喉は?身体のどこに力が入っている?逆に、力が抜けているところはある?

そんなふうに、身体に意識を向けてみる

すると、

「私、怒ってると思ってたけど、実は怖かったのかもしれない」

「嫌だと思っていたけど、悲しかったのかもしれない」

「何でもないと思っていたけど、ずっと緊張していたんだ」

そんなことに気づくことがあります

この「怒りの下に、別の感情が隠れている」という感覚については、noteの「またイライラしてしまった、の奥にあるもの|あなたの”リアクション芸”の正体」でも書いています

感情が分からないときは、「身体を感じる」練習から

もしあなたが、「自分の気持ちがよく分からない」「何が好きなのか分からない」「何をしたいのか分からない」というタイプなら、いきなり「本当はどうしたい?」と自分に聞いても、答えが出てこないことがあります。

そんなときは、まず身体から始めてみてもいい。

肩を回してみる。背中を動かしてみる。身体を温めてみる。ゆっくり息を吐いてみる。身体を伸ばしてみる。

そして、「今、どんな感じがする?」と感じてみる。

気持ちよければ、「あ、気持ちいい」

嫌なら、「なんか嫌だな」

分からなければ、「よく分からない」

それで十分です。

大切なのは、正しい答えを出すことではありません。

自分の身体で起きていることに、少しずつ気づいていくこと。

それが、自分の感情や感覚を知っていく入口になります

感情は、あなたを困らせるものではない

感情って、ときどき本当に厄介です。

突然やってきて、頭では「そんなに怒ることじゃない」と分かっているのに、イライラする。「怖がる必要なんてない」と分かっているのに、身体がこわばる。「もう気にしなくていい」と思っているのに、なぜか胸が苦しくなる。

そんなことがあります。

でも、それはあなたの感情がおかしいからではありません。

脳と身体は、今この瞬間だけを見て反応しているわけではありません。これまでの経験や記憶、学習してきたこと、今の状況などをもとに、つねに「自分にとって何が起きているのか」を判断しながら働いています。

だから、

「なんで私はこんなことで反応するんだろう」

と自分を責める前に、

「私の身体では、今、何が起きているんだろう?」

と見てみる。そこから、自分を理解できることがあります。

感情を理解することは、自分を理解すること

今日は少し理論的な話になりましたが、感情は、頭の中に突然現れる「謎のもの」ではありません。

身体の状態。外から入ってくる情報。これまでの経験。記憶。予測。その場の状況。そして、それらを統合している脳。

そうしたものが複雑に関わり合いながら、私たちは「今、こう感じている」という体験をしています。

だから、

「感情をどうにかしよう」

とする前に、

「今、私は何を感じているんだろう?」

「そのとき、身体では何が起きているんだろう?」

と見てみる。

それだけでも、自分との関係は少し変わってきます。

感情は、あなたを困らせる敵ではありません。あなたの中で起きていることを知るための、ひとつの入口です。

そしてその入口は、頭の中だけではなく、身体にもあります。

まずは今日、何かモヤモヤしたときに、

「どうして私はこんな気持ちなんだろう?」

ではなく、

「今、身体のどこで、何が起きているんだろう?」

と、自分の身体に聞いてみてください。

答えが出なくても大丈夫です。「胸がザワザワする」「肩が重い」「お腹が固い」「なんとなく落ち着かない」

それだけでも十分です。

自分の身体で起きていることに気づく。その小さな積み重ねが、「自分のことが、少し分かる」という感覚につながっていきます

「感情が身体とつながっている」という感覚が、頭では分かっても、一人ではうまく捉えられないと感じることもあると思います。カウンセリングでは、身体の反応を丁寧に見ながら、あなた自身の感情に気づいていくプロセスを、一緒にたどっていきます。

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