「できるだけ不安になりたくない」
「心配事のない毎日を送りたい」
「何が起きても動じない自分になりたい」
そう思うのは、自然なこと
不安や恐怖は、できれば感じたくない
だから私たちは、「不安がなくなれば、もっと幸せになれる」と考えてしまいます
不安をどうにかしたいというご希望で、セッションに来てくださる方もいらっしゃいます
もちろん、不安や緊張が続いている状態は、とてもつらいものです
だからこそ、多くの場合、まずは「安心」を取り戻すことが大切です
でも、セッションをしていると、ときどき思うのです……
本当に、不安がまったくない人生が幸せなのでしょうか
実は、「安心できるようになった」その先にも、もう一つ大切な段階があります
それは、安心した自分で、自分のやりたいことに向かって一歩踏み出していくこと
今日は、そんな「安心のその先」のお話です
まずは、「安心できる身体」を取り戻す
最初に、誤解のないようにお伝えしておきたいのですが
もし今、いつも不安や心配がある、何も起きていないのに落ち着かない、身体がいつも緊張している、リラックスしたいのに力が抜けない、小さなことでも最悪の事態を考えてしまう
という状態なら、「不安なんて気にしなくていい」とは言えません
対処できる問題から生まれている不安なら、まずはその問題に対処していく
また、日常生活に支障が出るほどの不安であれば、適切な機関に相談することも大切です
そこまでではないけれども、漠然とずっと不安がまとわりついているなぁ、という感じでしたら
まず必要なのは、安心していられる身体を取り戻すことかもしれません
人によっては、幼い頃から安心して過ごせる経験が少なく、知らないうちに「緊張していること」が当たり前になっている場合があります
たとえば
背中や肩、腰がいつも固まっている、呼吸が浅い、身体に力が入っている、何も起きていないのに、どこか落ち着かない
こうした状態が長く続いていると、身体が「固める」という防御反応によって、ストレスに対処してきた可能性があります
そして、それが長く続くと、「緊張していることが普通」になってしまうことがあるのです
本人からすると、それはもう「緊張」ではありません
それが、ご自分にとっての「普通」だからです
だから、「もっと前向きに考えよう」「気にしなければいい」と頭で言い聞かせても、なかなか安心できない
そんなときには、頭から無理に変えようとするのではなく、身体の側から「大丈夫」を経験していく
そんなプロセスが必要になることがあります
安心できるようになったら、それで終わり?
そして、ここからが今日お伝えしたいことです
セッションやセラピーを受けたり、自分自身と向き合ったりして
「以前よりずっと楽になった」「昔ほど不安にならなくなった」「身体の緊張も取れてきた」
というところまで来たとします
これは、とても大きな変化です
まずは、その安心できる状態を、十分に味わってほしい
「ああ、こんなに楽にいられるんだ」「何も起きていなくても大丈夫なんだ」
そんな感覚を身体に覚えてもらうことは、とても大切です
ただ、もしその状態がしばらく続いたあとに、「楽にはなった、でも、なぜか人生が動かない」という感覚が出てきたら
少しだけ、立ち止まってみてほしいのです
もしかすると、「不安にならないこと」そのものが、新しい目的になっていないでしょうか
不安や恐怖は、なくせばいいものではない
私たちは、不安や恐怖を「なくしたいもの」と考えがちです
でも、不安や恐怖は、本来、私たちを守るための大切な感情でもあります
危険を察知する、いつもと違うものに気づく、未知のものに慎重になる
そうやって、私たちは自分の身を守っています
そしてもう一つ
これまで経験したことのない世界に踏み出すときにも、不安や恐怖は自然に生まれます
心理学者の河合隼雄氏は、恐怖によって存在が揺さぶられることには、新しいことが開かれる可能性と、危機につながる可能性の両方がある、そんな視点を示しています
私は、この視点はとても大切だと思っています
なぜなら、「恐怖がある=間違っている」とは限らないからです
むしろ、新しいことを始めるときには、「これで大丈夫かな」「失敗したらどうしよう」という気持ちが出てきて当たり前
知らない領域に挑むときに、不安が出てくるのは、むしろ自然なこと
それは、「今まで知らなかった、新しい世界に踏み込もうとしている」印でもあるのです
「怖い」と「やらないほうがいい」は同じではない
たとえば、「これをやってみたい」「本当は、こう生きてみたい」と思ったとします
すると、なぜか急に不安が出てくる
「でも、無理かも」「失敗したらどうしよう」「嫌われたらどうしよう」
そして、「やっぱりやめておこう」となる
こういうことは、珍しくありません
でも、ここで覚えておいてほしいのです
不安が出てきたからといって、後戻りしているとは限らない
新しい人と出会う、仕事を変える、自分の意見を伝える、やりたかったことを始める
そういうときには、必ず未知のものに出会います
だから、「怖い」ことと、「やらないほうがいい」ことは、同じではないのです
一瞬の不安から、最悪の未来まで飛んでいませんか?
ただ、不安が強い方には、もう一つ特徴があります
ほんの小さな不安から、一気に「最悪の未来」まで行ってしまうことです
たとえば
「こんなことをしたら、嫌われるかもしれない」
↓
「仲間外れにされるかもしれない」
↓
「仕事も失うかもしれない」
↓
「誰も助けてくれない」
↓
「一人ぼっちになる」
……と、ものすごいスピードで先まで考えてしまう
もし思い当たるなら、一旦ストップ
今、実際に起きていることは何でしょうか
もしかすると、今あるのは、「嫌われるかもしれない」という不安だけかもしれません
なのに、頭の中ではすでに、「すべてを失って、一人になる」ところまで話が進んでいる
このとき怖いのは、目の前の出来事だけではありません
その先にある、「もし何か起きたら、私はどうにもできない」という感覚なのかもしれません
不安の奥に、「無力感」が隠れていることがある
不安を避けたくて仕方がない人の中には、「怖いことが起きたら、自分には対処できない」という感覚を持っている方がいます
何か問題が起きたら、「自分にはどうにもできない」「太刀打ちできない」と思ってしまう
そして、その裏には、「困ったときに誰も助けてくれない」「頼れる人がいない」という孤独への恐怖が隠れていることもあります
つまり、怖いのは出来事そのものだけではありません
その出来事が起きたときの、「私は大丈夫」という自分への信頼が持てないことが、不安をさらに大きくしている場合があります
だから、「不安にならないようにする」だけでは、根本的なところが変わらないことがあります
必要なのは、「もし不安になっても、私は大丈夫」という感覚を、少しずつ育てていくこと
そして、「困ったときには、人に頼ってもいい」という経験を増やしていくことです
「不安がなくなる」のを待たなくていい
では、どうすればいいのでしょう
まずは、「不安をなくしてから動こう」と思わないことです
不安がなくなるのを待っていたら、いつまでも始められないことがあります
「怖いけど、やってみたい」「不安だけど、こっちに行ってみたい」
そんな気持ちがあるなら、不安な自分も連れて、一歩だけ進んでみる
それでいいのです
いきなり大きな決断をする必要はありません
信頼できる人に、「実は、こんなことをやってみたいと思っている」と話してみる
少し調べてみる、誰かに相談してみる、小さく試してみる
「やってみたい」と思った方向に、ほんの少し身体を向けてみる
そうやって、「怖かったけど、やってみたら大丈夫だった」「困ったけど、人に相談できた」という経験を、少しずつ増やしていきます
すると、「不安があっても、私は大丈夫」という感覚が、少しずつ育っていきます
そして、その先にあるのは、「不安がない人生」ではなく、「不安があっても、自分の人生を選べる」ということです
不安のない人生ではなく、不安があっても自分の人生を生きる
もし今、「以前よりずっと楽になった」「昔ほど不安に振り回されなくなった」
それなのに、「なぜか人生が動かない」と感じているなら
もしかすると、今のあなたに必要なのは、「もっと安心すること」ではなく、「安心した自分で、勇気を持って次の一歩を踏み出すこと」なのかもしれません
不安になってもいい、怖くなってもいい、迷ってもいい
それでも、「私は、どうしたい?」と自分に問いかけて、自分の人生を選んでいける
その状態こそ、もっと大きな意味での「安心」なのだと思います
まとめ:安心できる自分で、自分の人生を選ぶ
もし今あなたが、「不安が強くて、何もできない」と感じているなら、まずは無理に挑戦しなくて大丈夫です
安心できる人と過ごす、身体の力を抜く、何も起きていない時間を過ごす
「今は大丈夫」という経験を、少しずつ増やしていく
まずは、そこから
一方で、「以前よりずっと楽になった」「昔ほど不安に振り回されなくなった」
それなのに、「なぜかやりたいことができない」「人生が動いていかない」と感じているなら
あなたは今、「安心を取り戻す段階」から、「安心を土台に人生を選択する段階」へ移ろうとしているのかもしれません
不安がなくなるのを待たなくていい
怖くてもいい、迷ってもいい、自信がなくてもいい
それでも、「私は、どうしたい?」と自分に問いかけて、自分の人生を選んでいく
私は、その先にこそ、「自分の人生を、自分で生きる」があるのだと思っています
