実家に帰ると「いい子」に戻ってしまうあなたへ

実家に帰ると「いい子」に戻ってしまうあなたへ 人間関係・境界線

〜帰省がしんどいのは、家族の中で身につけた役割が動き出すからかもしれません〜

「実家に帰るとへとへと」
「親に気を遣ってしまう」
「帰省前から憂うつになる」
そんな方へ

なぜ大人になった今でも、実家では「いい子」に戻ってしまうのでしょうか

帰省がしんどいのは、家族の中で身につけた役割が動き出すからかもしれません

実家に帰るのが、なんだかしんどい

「実家に帰ると、なんだかしんどい」

実はこれ、カウンセリングの現場では、決して珍しいご相談ではありません

お話を伺っていると、今の自分の考え方や行動には、生まれ育った環境や家族との関係が影響していることが少なくありません

「お盆や正月には、実家に帰るもの」というのも、一つの価値観かもしれません
実際に、帰らない選択をしている方もたくさんいます

けれど、「帰りたくないなら、帰らなければいい」という単純な話で片付けられないのが、家族の難しいところです

「親を喜ばせたい」「孫の顔を見せたい」「お墓参りなどの伝統も大切にしたい」そうやって親の意に沿いたいと思うのも、私たちの中に当たり前にある、大切な感覚だからです

私たちは常に、大切な人との関係性の中で「やりたいこと・やりたくないこと」を主張し合い、時にぶつかりながら、お互いの違いや適切な距離感を探り続けています

親が嫌いなわけではない
帰ることを拒否したいわけでもない

それなのに、実家に帰ると、どっと疲れる
帰省する前から、気が重い

そんな、矛盾した気持ちを抱えている方は、決して少なくありません

実家に帰ると、昔の自分に戻ってしまう

では、なぜ実家に帰ると、それほどまでに「しんどさ」を感じるのでしょうか

実家は、「安心できる場所」「落ち着く場所」だと思われがちです

でも実際には、実家に帰ることが重荷になり、かえって気を張ってしまう方も少なくありません(私自身も、以前はそうでした)

仕事では、自分の意見をきちんと伝えられる
友人とは、対等な関係を築けている

それなのに、親の前に立つと息苦しい、素のままでいられない
実家に帰ると、気づけば「いい子」の自分に戻ってしまう

その理由の一つが、子どもの頃に身につけた「家族の中での役割」が、実家に帰ることで再び動き始めてしまうから

実家という場所は、タイムカプセルのように、幼い頃の自分を呼び起こす場所でもあります

そして、よみがえるのは記憶だけではありません

当時の家族との関わり方や、その中で身につけた役割まで、無意識のうちに動き出してしまうことがあるのです

家族の中には、それぞれの「役割」がある

家族という小さな社会の中には、それぞれが自然と担ってきた役割があります

たとえば、

「いい子」
「空気を読む子」
「親を支える子」
「我慢する子」

などです

なぜ、こうした役割を身につけたのでしょうか

多くの場合、その役割は、その家庭の中で居場所を作り、誰かを助け、自分を守り、安心して過ごすために、自然と身につけたものなのです

  • しっかりした長女・長男でいれば褒められた
  • 聞き分けが良ければ叱られなかった
  • 親を支えれば頼りにされた
  • 我慢していれば波風が立たなかった

子どもは、その家庭の中で安心して過ごすために、「こうしていれば大丈夫」という自分なりのルールや、役割、方法を身につけていきます

その子なりに精一杯生み出した、自分や家族との関係を守るための「知恵」だったのです

実家では、その役割が自動的に動き出す

こうした役割は、大人になった今も、親の顔を見た瞬間に、無意識に呼び起こされてしまうことがあります

だから

  • いい子なら
    親を安心させようとする
  • 空気を読む子なら
    場を丸く収めようとする
  • お世話役なら
    家事を始める
  • 我慢する子なら
    本音を言わず、自分を透明にする

こうした過去のパターンが、実家に帰ると自動的に動き出してしまうのです

これは、性格ではありません
かつて身につけた「役割」が、今も勝手に動き出しているだけです

考えて、そうしているわけではありません
気づいたときには、もうそのように動いてしまっている、それくらい無意識のレベルなのです

「もう大人なんだから」「気にしすぎ」頭では、そう分かっています
それなのに、なぜかうまくできない

この「分かっているのに、なぜかできない」という感覚こそ、実家に帰るたびに抱える、違和感の正体かもしれません

役割が動くと、境界線も曖昧になる

役割が自動的に動き出す時に、もう一つ同時に起動してしまうことがあります

それは、自分と親との間にある「境界線(バウンダリー)」が、曖昧になってしまうこと

「親を喜ばせなきゃ」
「帰らないと、悪いよね」

こうした思いが強くなるとき、「いい子」の役割が動いています

そうすると、「親がどう感じるか」と「自分がどうしたいか」の境目が曖昧になり、まるで親の感じていることが、自分の感じていることと、同じことのように感じられてしまいます

親の喜びが、あたかも自分の喜びのように、一つに混ざり合ってしまうのです

その結果、自分の気持ちや疲れを、後回しにしてしまうことがあります

これが、実家でしんどくなる、もう一つの正体です

身体も昔の反応を思い出す

境界線が曖昧になるのと同時に、身体もまた、昔の反応を思い出しています
長い間、その役割を続けてきた人ほど、頭で考えるより先に身体が反応してしまいます

つまり、頭では「今は大人の自分」と分かっていても、身体は、過去に身につけた反応パターンを再び働かせることがあるのです

「嫌だ」と思う前に気を遣ってしまう
「断りたい」と思う前に「いいよ」と言ってしまう

玄関をくぐった瞬間、なんとなく緊張する
呼吸が、いつの間にか浅くなっている

「親に何か言われたから、ストレスを感じた」だけではありません
その場にいるだけで、身体が緊張していることもあります

過去、その環境の中で身につけた緊張や警戒のパターンが、今も反応として残っているからです

本人は、まったくそのつもりがなくても、身体が、かつての”いい子モード”に戻っている
これが、意志や感情とは関係ない身についてしまった反応のパターン、実家でしんどくなる、もう一つの正体、かもしれません

感謝としんどさは両立する

ここまで読んで、「でも、親には感謝しているのに」と、罪悪感を感じている方もいるかもしれませんね

「親のことは大切に思っている」
「一緒にいると疲れる」

この2つは、矛盾しているように感じるかもしれません
でも、実際には両立する感情です

例え、感謝していても、人と一緒にいることで疲れることは、誰にでもあります
疲れたからといって、感謝の気持ちが消えるわけでもありません

逆に、感謝しているからこそ疲れることもあります
大切な相手だからこそ、無意識に気を遣い、頑張りすぎてしまうこともあるのです

親を否定する必要も、自分を責める必要もありません
ただ、お互いにとって心地よい距離感を、一緒に探っていけばいい、それだけのことです

次で、少しその「昔の役割」から離れてみるワークをご紹介しますので
ご興味がありましたら、やってみてくださいね

「昔の役割」から少し離れる、5つのワーク

ここで大切なのは、「親を変える方法」を探すことではありません

まず、自分の中で何が起きているのかを知ることです

「親にどう対応するか」を考える前に、少しだけ、自分自身を観察してみましょう

① 身体のどこかが、緊張しているか感じてみる

首、肩、喉、胸、お腹、腰、ゆっくりと一部分ずつ感じてみましょう

よくわかんないなーという方は、一か所づつ手のひらをあててみましょう

首の後ろ、首の左側、首の右側、前側の喉、
左の肩、右の肩、鎖骨、胸(胸骨)、
胃、おへそ、骨盤の左側、骨盤の右側、腰や背中……

どこかに力が入っていませんか
「緊張している」と頭で判断するだけでなく、身体の感覚そのものに意識を向けてみてください

そして、緊張していて構いません、力が入っていて大丈夫

緩めたいなと思われるかもしれませんが、緊張している、力が入っている、それに気が付けばOKです

力が入っているのは、力を入れる必要があると身体が判断した結果です

「力が入っているんだね」と気が付き、
「守ってくれて、ありがとうね」とねぎらってあげてください

意図的に「ゆるめよう」とすると逆に力が入るもので、大体は、気が付くとそのままゆるみます

身体の緊張には理由がありますので、身体を敵にしないであげてください

② 「本当はどうしたい」と自分に聞いてみる

身体に力が入っている部分があることがわかりましたが、それはそれで置いておいて
今、この瞬間、どうしたいのか、自分に聴いてみてください

「もう少し一人でいたい」
「話したくない」
「散歩に出たい」
「早く帰りたい」

どんな小さな願いでも構いません
どんな気持ちが出てきても大丈夫です、そっかー、そう思ってたんだねー

今は、叶えようとしなくても大丈夫、まずは気づいてあげること

③ 「しなければ」と思っていることを書き出す

「手伝わなければ」
「話を聞かなければ」
「笑顔でいなければ」
「親を喜ばせなければ」

今、自分がどんな「しなければ」を抱えているか、書き出してみましょう

書き出してみると、自分が思っていた以上に、たくさんの「しなければ」に囲まれていたことに気づくかもしれません

こちらも、やらなきゃと考えなくても、手放さなきゃと考えなくても大丈夫
ただ、気が付く、それが目的です

④ 親の期待と、自分の願いを分けて並べる

②で見えてきた「自分の願い」と、③で見えてきた「しなければ」を、並べて見てみましょう

「私は、本当はどうしたい?」

それに対して、

「親は、どうしてほしいと思っているだろう」
「私は、何をしなければならないと思っているのだろう」

この二つを分けて見てみてください

問題なのは、自分の気持ちを置き去りにしたまま、無意識に親を優先してしまうことです

だから、まずは自分の気持ちを知ること

その上で、親のために何をするかを、自分で選んでみてください

最終的に、どちらを選んでも大丈夫です
あなたが「意識して選んだ」のであれば、それはあなた自身の選択です

⑤ しんどくなったら、その場から離れていい

  • 少し外の空気を吸う
  • 散歩に出る
  • 別の部屋に行く

それだけでも、身体の緊張がゆるむことがあります

長時間一緒にいることや、最後までその場に居続けることだけが、「家族を大切にする」ということではありません
全部の話を聞かなくてもいいし、「せっかく帰ってきたんだから」と、自分を犠牲にしなくてもいいのです

家族の前でも、自分でいられるということ

これは、単なる「帰省ストレス対策」の話ではないのですね

「私は本当はどうしたい」が分かること
自分の感覚を信じられること
誰かの期待ではなく、自分の人生を選べること

実家で自分に問いかけられるようになることは、実家の中だけの問題ではありません

仕事でも、人間関係でも、人生の選択でも、「周りはどう思うだろう」ではなく、「私はどうしたい」と、自分の感覚に戻ってこられること

それは、自分の人生を自分で選んでいくための、大切な土台になります

まとめ

あなたが実家で「いい子」になってしまうのには、そうしてきた理由があります

ずっと周囲の期待に応え、空気を読み、自分より誰かを優先してきたのなら、実家で同じことをしてしまうのも、無理はないのです

「実家で昔の役割が動く」ということに気づけたなら、それだけでも大きな一歩

気づけるようになると、少しずつ、今の「大人の自分」として選び直せる瞬間が増えていきます

まずは、「私の中で、何が起きているんだろう」と、自分を理解するところから始めてみてください

もし一人では整理しきれないと感じたら、カウンセリングで、その理由を一緒に紐解いていきましょう

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